江戸時代は約260年続き、経済には浮き沈みがありました。経済評論家の岡田氏は、徳川家康から綱吉、家武、家治の時代の経済成長と、現代の日本経済に類似点があると指摘しています。家康がもたらした高度経済成長や貨幣再鋳政策、田沼時代の政策など、江戸時代の経済政策について解説しています。岡田氏は、現代にも役立つ教訓があるとし、著書『徳川幕府の経済政策:その光と影』を紹介しています。
文/鈴木拓也
江戸時代は約260年にわたり、戦乱が絶えず、武士から庶民までが平和で穏やかな時代を過ごしたように思われます。
しかし、実際には、経済には浮き沈みがあり、必ずしも順風満帆とは言えません。さらに、日本経済には20世紀の戦後から21世紀の令和時代までの日本の現代経済と多くの類似点があると、日本史に詳しい経済評論家の岡田彰氏は語っています。
岡田氏によると、徳川家康から綱吉、家武、家治の時代の高度経済成長は、平成バブルの崩壊に似ていると考えられ、徳川幕府の経済政策を理解することで、徳川幕府の停滞を理解することができるとされています。その見解は、著書『徳川幕府の経済政策:その光と影』(PHP研究所)にまとめられています。
家康がもたらした「高度経済成長」
江戸が当時、人口100万人を誇る世界最大の都市であったことはご存知の方も多いかと思います。しかし、これは首都の創設から1世紀後、18世紀初頭の話です。
同書によると、家康が秀吉の命令でこの地に移住した当時は、「茅小屋が100軒ほどしかない」寂しい場所だったとされています。家康の功績を強調するための控えめな表現かもしれませんが、京都や大阪とは比較にならない小さな都市であったことは間違いありません。
家康はこの地に居を構え、江戸城と城下町の発展に尽力しました。例えば、江戸城の周囲には道三堀が掘られ、船が城内に物資を運ぶことができたそうです。江戸城は何度も増改築が行われましたが、正威大将軍になると、各地の大名が自費で築城工事を行い、これを「天下方式」と呼びました。これは江戸城に限らず、伏見城、彦根城、伊賀上野城などの要衝の城の築城にも及びます。
大名統制の手段として、典家の慣習は大名の経済力を弱め、徳川家への忠誠心を高めることを目的としたものでした。岡田氏は、これも経済効果が大きいと指摘しています。都市化の進展に伴い人口が流入し、消費が急速に拡大することで好循環が生まれ、さらなる人口増加が促進されるとしています。また、経済成長をもたらした家康の政策を「経済学」と呼び、太平洋戦争後の高度経済成長との類似点が多いとも指摘しています。